ひよっこぴょこ丸の『脱線ライフ』

人生、脱線してからが本番!人生1回目のひよっこが世の中のなんやかんやについて書くブログ

LEFスピンオフ『人魚の歌』エピローグ

【前回までのあらすじ】

ぴょこ丸が徹夜で作った『ハデな水鉄砲』でハンターたちを無事撃破したハルナ。

2人に再び平穏な日常が戻るが、それは別れの始まりでもあった…

〜〜〜〜〜〜〜〜

「まことさん!申し訳ないね…いつもいつも…」

ぴょこ丸が連絡を取った相手は、なんでも王国の騎士団長らしい。

「いいですよーこのくらい。また何かあったらよろしく頼みます」

彼女とぴょこ丸は旧知の仲のようだ。

ぴょこ丸も自分に対するややぶっきらぼうな態度とは異なり、柔らかな雰囲気で話している。

拘束されたハンターと猟犬は、一旦王都に身柄を預けられることになった。

「しまった。扉の修理代ぶんどり損ねたな…」

「自分で壊したんじゃないか!」

つい、クセでツッコんでしまった。

「いや。壊れた要因はヤツにあるし…って壊したのはおハルちゃんじゃないか!」

「おハルちゃん!?」

ぴょこ丸のツッコミ返しにも驚いたが『おハルちゃん』とは…?

「昨日まで『アンタ』とか呼んでたのに、急に馴れ馴れしくないか?」

少し動揺しながら切り返すと

「仲良くなった人は『ちゃん付け』で呼ぶことにしてる。一緒に困難を乗り越えた仲だろ?」

ニヤリと笑ったぴょこ丸に『おハルちゃん』と呼ばれることに不思議とイヤな感じはしなかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜

「さてと…朝の話の続きなんだけど…」

ぴょこ丸がハーブティを入れながら話を切り出す。

「なんだっけ?」

ハンターに追われる恐怖から解放されたからからか、おハルちゃんと呼ばれたからか、心なしか返答も軽くなる。

「もし、ほかに行くあてがないなら…」

そうだった。そんな話の途中だった。

「向こうの山のてっぺんに、昔世話になった占い師がいるんだ。少し遠いけど、今のおハルちゃんにとっては安心できる場所になるかもしれない。綺麗な水の湧いてる泉もあるんだ」

ぴょこ丸が壁に掛けてある『星の装飾がついた剣』を見つめながら話す。

その場所に思いを馳せているようだった。

「うん。ぴょこ丸が言うならそうするよ」

「よかった!とはいえ今日はバタバタしてたし、出発は明日にしようか」

「そうだね…なら、もう一晩だけ泊まっていこうかな?ハーブのお風呂も気持ちよかったし♪」

その日は、昼のうちに扉の修理を手伝って、夜はご飯を食べながらお互いのことを話したり、歌を聴かせたりした。

誰かのために歌うのも、案外悪くはないなと思った。

ゆっくりハーブ風呂に浸かって、昨夜と同様ベッドを占領して寝かせてもらった。

ぴょこ丸は今日も夜通し作業すると言っていた。

〜〜〜〜〜〜

翌朝、朝食を済ませて、いよいよ出発の準備をする。

だった2日ちょっとの付き合いだったが、離れるとなると少し寂しい。

「じゃあこれ。昨日の晩に仕上げといたから」

そう言ってぴょこ丸は『ハデな水鉄砲』の改良版と『パズルピース型のペンダント』を渡してくれた。

「こっちは威力と強度を調整してある。これで実践レベルで運用できる。ホルスターも付けたしね」

「こっちは?」

「それはただのアクセサリーじゃない。『導きの魔石』が埋め込まれてるから、同じアクセサリーを持ってる人同士を引き合う力がある。まこと団長も山の占い師も持ってるし、旅先で他にも出会うかもね。その時は迷わず頼りにするといい」

一晩でそんなものまで作ったのか…

つくづく感心する。

「おハルちゃん。キミの歌は素晴らしい。正しく使えば、誰かを癒すことも、誰かを守ることもできる。旅をしながら、たくさんの人にその歌を届けて欲しい…」

そう言って、ペンダントを首にかけてくれた。

「とりあえず、街までは送るよ。旅の準備と…あ!まこと団長に頼んだら護衛をつけてくれるかも!」

〜〜〜〜〜〜〜〜

旅の準備も整い、護衛も二人つけてもらえた。

これで安心して送り出すことができる。

たった2日ちょっとの付き合いとはいえ、やはり別れるのは寂しいものだ。

「じゃあ…オレはここで。おハルちゃん。気をつけて」

「うん。2日間本当にありがとう」

固く握手を交わす。

「何かあったらいつでもウチに来るといい。その時はまたハーブ風呂を用意しておくから」

「その時は私も、歌を聴かせるね」

お互いフッと笑って手を離した。

これでまた、お互い別の物語を紡いでいくわけだが、なんとなく、また会えるような気がしていた…

(…終わり)

LEFスピンオフ『人魚の歌』パート4

【前回までのあらすじ】

陸に上がった人魚であるハルナを追ってきたハンターの来訪。

まともにやりあったのでは勝ち目がないと判断したぴょこ丸の秘策とは…

〜〜〜〜〜〜〜〜

「おいッ!いい加減出てこいッ!!」

遅いッ!流石にもう待てないッ!!

「出てこないと、この扉ぶち破るゾッ!!」

「わかってるって、今開けるから少し下がってろ」

男の声が扉越しに聞こえる。

「3つ数えるウチに出てこいッ!!」

いきなりぶち破ってもいいが、勝手に出てきてくれるならその方が手間がない。

「サンッ…ニィ…イチッ!!ドぅわッッッ!!」

なんだ!?何が起こった!?

…水??

カウントダウンが終わる瞬間、大量の流水が扉をぶち抜いて吹き出してきたようだ。

「これは…思った以上の威力だな…」

「なんなんだいったいッ!?」

猟犬たちも駆け寄ってきた。

よろめきながら立ち上がる。

扉の吹き飛んだ入り口から『銃のようなもの』を持った女たちが出てくる…

「これなら…いける!」

男が勝ち誇ったように呟いたのが聞こえた…

〜〜〜〜数分前〜〜〜〜

ーバタンー

ノックもなく風呂場の扉が開かれ、一瞬身をすくめたが、入ってきたのはぴょこ丸だった。

「やっぱりハンターだった。時間がない。手短に説明するから聞いて」

早口でまくしたてるぴょこ丸は、昨日預けた短剣と『銃のようなもの』を手に持っていた。

「『コイツ』でハンターどもを倒す。それしかない」

「『これ』で!?私が!?」

状況がうまく飲み込めない。

「『コイツ』は、あんた専用に作った一種の『魔動銃』だ。短剣の魔力を充填して高圧で水を発射する。まあ『ハデな水鉄砲』ってところだな」

専用に作った?徹夜で??その『水鉄砲』で?ハンターを倒す??

「言いたいことはわかる。試し打ちもせずいきなり実践だからな…だが、今は信用してもらうしかない。」

「でも…」

「大丈夫。間違っても相手を殺すほどの威力は出ない。とりあえず制圧できればオレたちの勝ちだ」

聞こうと思ったことを先回りされた。

人魚だとバレた件もそうだ。この男のカン…いや、観察眼か…は妙に鋭い。

「わかった」

その『ハデな水鉄砲』を受け取り、グリップを握る。

初めて握る武器なのに、不思議と違和感がない。これもこの男の才能なのか?

「おいッ!いい加減出てこいッ!!」

しびれを切らしたハンターが叫んでいる。

「出てこないと、この扉ぶち破るゾッ!!」

「わかってるって、今開けるから少し下がってろ」

ぴょこ丸が扉越しに答える。

「3つ数えるウチに出てこいッ!!」

「ちょうどいい…カウントダウンが終わる瞬間に玄関の扉ごとぶち抜け!」

「え!?」

「いいから!構えて!」

慣れない手つきで扉に照準を合わせる。

「サンッ…ニィ…イチッ!!」

「今だ!!」

カウントダウンが終わった瞬間、ぴょこ丸の合図に合わせて引き金を引く。

「うわッ!!」

「ドぅわッッッ!!」

予想外の衝撃に吹き飛ばされそうになったが、なんとか持ちこたえる。

「これは…思った以上の威力だな…」

ぴょこ丸がつぶやく。

だけど、ちょっとだけ気分がスッキリした…いや…むしろ…

(カ・イ・カ・ン…♡)

「なんなんだいったいッ!?」

〜〜〜〜〜〜〜〜

「これなら…いける!」

勝ちを確信したが、まだ油断はできない。

ハルナが突進してきた1匹目の猟犬に銃口を向ける。

ハルナの目つきが別人のように鋭くなっている…口元はわずかに微笑んでいるように見えるが…

「キャン!」

水弾は猟犬の体の周りを水泡で包み、動きを封じる。

「なんだ?どうなってる??」

ハンターはもちろん、ハルナも動揺している。

そういえば説明してなかったな…

『短剣に込められた水の魔力を使って、放った水弾を自在にコントロールできる』

それがこの『水鉄砲』の強みであった。

もっとも、それを扱うハルナとの相性あってこそだが…

遅れて突っ込んできた2匹目に向かって放たれた水弾は、猟犬の眼前で弾けて、1匹目と同様水泡で拘束された。

「ヒィッ!!」

ハルナに睨まれて、ハンターが怯えきっている。

やはりあの武器は見かけ倒しだったか…

「イ、いのちだけはァ…」

「…許さん」

命乞いするハンターに、冷水よりも冷たい言葉が浴びせられる。

「うらぁああああ!!」

最初に扉をやっぶった時よりもさらに大量の水流が水泡となってハンターを包んだかと思うと、ハルナの声に共鳴するように震えて、猟犬の分も合わせて激しく爆ぜた。

「なんだ…今のは…」

水泡の弾けた後には、3匹…もとい、2匹と1人がずぶ濡れで気絶していた。

「これ…どうしようか?」

以前の表情に戻ったハルナに問われ

「あー、知り合いに引き取ってくれそうなアテがあるから、ちょっと連絡してみるよ。とりあえず縛っておこう」

(…つづく)

LEFスピンオフ『人魚の歌』パート4

【前回までのあらすじ】

陸に上がった人魚であるハルナを追ってきたハンターの来訪。

まともにやりあったのでは勝ち目がないと判断したぴょこ丸の秘策とは…

〜〜〜〜〜〜〜〜

「おいッ!いい加減出てこいッ!!」

遅いッ!流石にもう待てないッ!!

「出てこないと、この扉ぶち破るゾッ!!」

「わかってるって、今開けるから少し下がってろ」

男の声が扉越しに聞こえる。

「3つ数えるウチに出てこいッ!!」

いきなりぶち破ってもいいが、勝手に出てきてくれるならその方が手間がない。

「サンッ…ニィ…イチッ!!ドぅわッッッ!!」

なんだ!?何が起こった!?

…水??

カウントダウンが終わる瞬間、大量の流水が扉をぶち抜いて吹き出してきたようだ。

「これは…思った以上の威力だな…」

「なんなんだいったいッ!?」

猟犬たちも駆け寄ってきた。

よろめきながら立ち上がる。

扉の吹き飛んだ入り口から『銃のようなもの』を持った女たちが出てくる…

「これなら…いける!」

男が勝ち誇ったように呟いたのが聞こえた…

〜〜〜〜数分前〜〜〜〜

ーバタンー

ノックもなく風呂場の扉が開かれ、一瞬身をすくめたが、入ってきたのはぴょこ丸だった。

「やっぱりハンターだった。時間がない。手短に説明するから聞いて」

早口でまくしたてるぴょこ丸は、昨日預けた短剣と『銃のようなもの』を手に持っていた。

「『コイツ』でハンターどもを倒す。それしかない」

「『これ』で!?私が!?」

状況がうまく飲み込めない。

「『コイツ』は、あんた専用に作った一種の『魔動銃』だ。短剣の魔力を充填して高圧で水を発射する。まあ『ハデな水鉄砲』ってところだな」

専用に作った?徹夜で??その『水鉄砲』で?ハンターを倒す??

「言いたいことはわかる。試し打ちもせずいきなり実践だからな…だが、今は信用してもらうしかない。」

「でも…」

「大丈夫。間違っても相手を殺すほどの威力は出ない。とりあえず制圧できればオレたちの勝ちだ」

聞こうと思ったことを先回りされた。

人魚だとバレた件もそうだ。この男のカン…いや、観察眼か…は妙に鋭い。

「わかった」

その『ハデな水鉄砲』を受け取り、グリップを握る。

初めて握る武器なのに、不思議と違和感がない。これもこの男の才能なのか?

「おいッ!いい加減出てこいッ!!」

しびれを切らしたハンターが叫んでいる。

「出てこないと、この扉ぶち破るゾッ!!」

「わかってるって、今開けるから少し下がってろ」

ぴょこ丸が扉越しに答える。

「3つ数えるウチに出てこいッ!!」

「ちょうどいい…カウントダウンが終わる瞬間に玄関の扉ごとぶち抜け!」

「え!?」

「いいから!構えて!」

慣れない手つきで扉に照準を合わせる。

「サンッ…ニィ…イチッ!!」

「今だ!!」

カウントダウンが終わった瞬間、ぴょこ丸の合図に合わせて引き金を引く。

「うわッ!!」

「ドぅわッッッ!!」

予想外の衝撃に吹き飛ばされそうになったが、なんとか持ちこたえる。

「これは…思った以上の威力だな…」

ぴょこ丸がつぶやく。

だけど、ちょっとだけ気分がスッキリした…いや…むしろ…

(カ・イ・カ・ン…♡)

「なんなんだいったいッ!?」

〜〜〜〜〜〜〜〜

「これなら…いける!」

勝ちを確信したが、まだ油断はできない。

ハルナが突進してきた1匹目の猟犬に銃口を向ける。

ハルナの目つきが別人のように鋭くなっている…口元はわずかに微笑んでいるように見えるが…

「キャン!」

水弾は猟犬の体の周りを水泡で包み、動きを封じる。

「なんだ?どうなってる??」

ハンターはもちろん、ハルナも動揺している。

そういえば説明してなかったな…

『短剣に込められた水の魔力を使って、放った水弾を自在にコントロールできる』

それがこの『水鉄砲』の強みであった。

もっとも、それを扱うハルナとの相性あってこそだが…

遅れて突っ込んできた2匹目に向かって放たれた水弾は、猟犬の眼前で弾けて、1匹目と同様水泡で拘束された。

「ヒィッ!!」

ハルナに睨まれて、ハンターが怯えきっている。

やはりあの武器は見かけ倒しだったか…

「イ、いのちだけはァ…」

「…許さん」

命乞いするハンターに、冷水よりも冷たい言葉が浴びせられる。

「うらぁああああ!!」

最初に扉をやっぶった時よりもさらに大量の水流が水泡となってハンターを包んだかと思うと、ハルナの声に共鳴するように震えて、猟犬の分も合わせて激しく爆ぜた。

「なんだ…今のは…」

水泡の弾けた後には、3匹…もとい、2匹と1人がずぶ濡れで気絶していた。

「これ…どうしようか?」

以前の表情に戻ったハルナに問われ

「あー、知り合いに引き取ってくれそうなアテがあるから、ちょっと連絡してみるよ。とりあえず縛っておこう」

(…つづく)

LEFスピンオフ『人魚の歌』パート3

【前回までのあらすじ】

保護した女は、ハンターに追われる人魚だった。

短剣を見せてもらうことを条件に寝床を貸し、徹夜で作業するぴょこ丸。

疲労と安心感から熟睡していたハルナが目を覚ますと…

〜〜〜〜〜〜〜〜

ートントントントン…ー

…朝食を作る音だろうか?

リズミカルに刻まれる音と、窓から差し込む柔らかな日差しに誘われて、緩やかに目が覚めた。

どうやら雨は上がったらしい。

疲れから、他人の家の慣れないベッドで熟睡してしまっていたが、お陰で前日の疲労感はほぼない。

薬草風呂とハーブティも効いているのかもしれない。

ードンドンドンドン…ー

やや激しさを増した音に、違和感を感じつつ、階下へと降りると、そこには、予想外の光景が広がっていた…

〜〜〜〜〜〜〜〜

「ぴょこ丸!?なにやってるんだ??」

作業に没頭しすぎて、声をかけられるまでハルナが降りてきていたことにさえ気づかなかった。

「ああ、うるさかったね。これは…ちょっとひと仕事…ってもう朝か!」

気がつくと窓から日差しが差し込んでいた。

それは、ハルナも起きてくるわけだ…

ぐちゃぐちゃになった作業台を、呆れたように見ているハルナに

「…ひと段落ついたら朝食にしよう。好き嫌いとかは…ある?」

〜〜〜〜〜〜〜〜

ハルナが身だしなみを整えている間に、作業を終え、朝食の準備をする。

魚が主食らしいが、あいにく魚の在庫がなかったので、トーストとベーコンと目玉焼きで勘弁してもらった。

デザートに『ミントキューブアイス』を勧めたが、やんわりと断られたので、一粒口に放り込んで食後のコーヒーを淹れる。

「で、これからどうする?もし行くアテがないなら…」

ーバンッバンッバンッー

話を遮るように玄関の扉が激しく叩かれる。

今日も来客の予定はなかった…『招かれざる客』というわけか…

「おいッ!だれかいるんだろう?いるなら開けろッ!!」

明らかに敵意を含んだ、野太いガラガラ声。

嫌な予感がする。

「…どうしよう。きっとハンターだ…」

ハルナの顔が恐怖で引きつっている。

「大丈夫。オレが対応するから、とりあえず風呂場に隠れてて」

ハルナが風呂場に入ったのを確認して、玄関に向かう。

「はいはい。今開けるから静かにしてくれ」

扉を叩く音が収まったタイミングでゆっくりとドアを開ける。

「おいッ!オマエ、女を匿っているナ?」

扉の前には、クマと見紛うほどの巨漢が二頭の猟犬を従えて立っていた。

やはり、ハルナを追っていたハンターのようだ。

「バケモノが3匹…おかしいなぁ…『獣避けの香』を焚いてたハズなんだけど?」

「なにィ?!」

相手のペースに飲まれないよう、挑発してはぐらかす。

『獣避けの香』の匂いを嗅ぎ分けらない猟犬と見るからに体の重たそうな巨漢。

この巨体では、木の生い茂る森の中をまっすぐ進むだけでも一苦労だろう。

ハルナが森に逃げた判断は、咄嗟のこととはいえ正しかったようだ。

とはいえ、この状況でまともにやりあったら確実に負ける…考えろ…

「マナーの悪いお客さんだ…で、要件はなんだって?」

「女だよ!オンナッ!!昨日ココに逃げてきたハズだ!さっさとソイツを引き渡せッ!!」

「わかった。わかったからツバを飛ばすのやめてくれ!…で、女を引き渡したらいくらもらえるんだ?」

「おいッ!テメェ、コイツが見えないのカ?」

背負っていた大振りの剣を構える。

なるほど…たしかにこの体格なら、その大剣も難なく振り回すことが出来るだろう…

無駄に凶暴なデザインだが、おそらく威嚇の意味もあるのだろう。

チラつかせるだけで、相手を従わせることができるならその方が労力も少なくて済む。

まあ、オレならこの男にももっとぴったりの武器を作れると思うが…

っと、つい意識が逸れてしまった。

武器のことになるとつい…

武器…そうか…

「わかった。わかった。女を引き渡す…ちょっと待ってろ…」

「フンッ…最初ッから大人しく言うこと聞いてればイイんダッ!!」

鼻息を荒げるハンターを背に一度扉を閉める…

相応のリスクはあるが、今はその方法しか思いつかない。

やるしかない…

(つづく…)

LEFスピンオフ『人魚の歌』パート2

【前回までのあらすじ】

何者かに追われて、森の奥にある工房に迷い込んだ『ハルナ』。

工房のあるじ『ぴょこ丸』を信じて保護を受けることにした彼女には、実は秘密があった…

〜〜〜〜〜〜〜〜

「ふぅ…」

汚れた体を洗い流し、ゆっくりと湯船に浸かる。

じんわりと暖かさが広がってきて、自分の体が冷えきっていたのに気がつく。

やっぱり、水に触れていると落ち着く。

湯船には、先ほどのハーブティと似た香りの薬草が浮かべられていた。

肩の傷は、血は止まっているものの、やはりピリピリと痛む。

ゆっくりと肩まで湯に浸かり、考える。

追われていた理由はおそらく『アレ』だ。

すでにこの街にも情報が入っていたのだろう。

しかし、この工房の主人たる青年…雨の中、夜遅くに突然飛び込んできた私に、警戒する様子もなく親切にしてくれている。

『泊まっていけ』と言われた時には、何か下心でもあるんじゃないかと思ったが、彼の関心はむしろ、あの『短剣』の方にあったようだ。

父からもらった大切なものだが、世話になっているお礼だ。

信頼には信頼で応えなければ…

水に触れて、父のことを思い出し、少しだけ気持ちが緩んだ。思わず鼻歌が漏れる。

「♪〜」

明日からの行くアテはないが、今はこの安心感に身を委ねよう…

〜〜〜〜〜〜〜〜

この『短剣』と向き合って、どれくらいの時間がたったのだろう。

単に美しいだけでなく、はめ込まれた蒼い石には、水の魔力が込められているようだった。

スケッチも描き終え、改めて短剣を見つめていると

「ありがとう。いいお湯だったわ。それに薬草まで」

お風呂から上がって、貸しておいたバスローブを羽織ったハルナが立っていた。

お風呂に入る前と比べて、肌にも目にも明らかに生命力が増しているのがわかった。

「元気になったなら何よりだ。ところで…」

「ん?」

これまでで気づいたことを問う。

「アンタ、もしかして…"人魚"なのか?」

気づいてしまったゆえ、聞かずにはいられなかった。

「おまえ…なぜ…」

ハルナの顔が険しくなる。

明らかに警戒心を強めている。

どうやら、あったっているらしい。

「イヤ、オレは『人魚伝説』なんか信じちゃいない。アンタの血や肉にも興味はない」

少し警戒が緩む。

『人魚の血や肉を摂れば、不老不死の力が得られる』という古い伝説がある。

もっとも、人魚という種族が発見されるずっと前に書かれたもので、殆どの人間は信じていない。

二本足で歩いていることは解せぬが、追われていた理由はその『人魚伝説』のせいと考えれば合点がいく。

「なんで…わかったの?」

「この短剣、装飾は明らかに海のものだし、石には水の魔力が込められていた。それに…」

「それに?」

普段から人を観察しているせいか、歩き方、所作、息遣いにもどこか人間離れした雰囲気を感じていたが…

「お風呂から聞こえてきた歌が、この世のものとは思えないくらい美しくて…」

人魚は歌が上手いと聞いたことはあったが、実際に聞くのは初めてだった。

初めて聞くのに、どこか懐かしい、不思議な歌だった…が

「な"ッ!?」

ハルナが人魚であることがバレた時以上に動揺している。

顔が見る間に真っ赤になる。

「すまない…盗み聞きするつもりはなかったんだけど、美しすぎて…つい聞き入ってしまった…」

「ウぅ…うつ?うつくしッ!?」

ハルナは、さらに動揺してワナワナと震えている。

鼻歌を聞かれたこと以上に、その歌を褒められることに動揺しているようだ。

「あー…その…えーと…」

予想外の動揺に、こちらも同様に動揺する。

「ベッドは二階に。好きなように使ってもらっていい。オレはもう少し短剣を見させてもらうことに…」

まだ、紅潮した顔でワナワナと震えている…

「あの…ハーブティ飲む?」

〜〜〜〜〜〜〜〜

そのあとは、ハルナが落ち着くまでハーブティを飲みながら雑談をした。

今まで、誰かに聞かせるために歌を歌ったことがなかったらしい。

だから、感想を言われたことも、ましてや褒められたことなどなかったという。

海は今魔王によって住める状態ではなくなっており、かつての海を取り戻すために気合いで陸に上がって二本足で歩けるようになったらしい。

世界には、まだまだ不思議なことがたくさんあるもんだと感心した。

そして、追手はおそらく、人魚伝説を信じる何者かに雇われた賞金稼ぎだろうとのことだった。

二頭の猟犬を連れた大柄なハンターで、町のはずれで、ハルナが1人になったところを襲ってきたらしい。

幸い、小雨が降っていたため、猟犬の嗅覚に追われることなく、逃げながらさまよった挙句にここにたどり着いたらしい。

しかし、屈強なハンターと猟犬を差し置いて逃げ切るほどの健脚を持った人魚とは…

さらに、とりとめのない話をして、落ち着いた頃を見計らって

「さ、今日はいろいろあって疲れてるだろうし、もう寝たほうがいい。さっきも言った通り2階のベッドは好きに使ってくれていいから」

「ああ。何から何まですまない…おやすみなさい」

「おやすみ。明日のことは、明日朝飯がてら考えよう」

「ぴょこ丸はどうするんだ?」

「オレは…この短剣ともう少し向き合うことにする」

〜〜〜〜〜〜〜〜

今は元気そうに振舞っていたが、ベッドに入れば疲れでぐっすり寝られるだろう。

「さてと…」

作業机に向かって製図用紙を取り出す。

こんなにワクワクするのは久しぶりだ。今夜は徹夜になりそうだ…

〜つづく〜

LEFスピンオフ『人魚の歌』

「ハァ…ハァ…」

どうしてバレたんだろう?

この街に来てまだ誰とも話してない。

それなのになぜ?追われるハメになったのだろう?

だが、今はそんなことを冷静に考える余裕もない。

小雨の降る中、必死で走り続け、気がついた時には、すでに森の中に迷い込んでいた。

いつのまにか肩口から血が滲んでいた。

どこかに引っ掛けたのだろうか?

痛みは感じない。

そのくらい神経が興奮しているのがわかる。

暗い、寒い、怖い、息が上がる、胸が苦しい…

「だれか…たすけて…」

走りながら、誰にも届かない掠れた声でつぶやく。

その時、森の奥にかすかな光を見つけた。

幼い頃の父の言葉を思い出す。

『暗闇で迷った時は、少しでも明るい方に向かって進むんだ。大丈夫。出口は必ずある』

残された、わずかな体力を振り絞り、その光の中に飛び込んだ…

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「さてと…」

夕食も済んだし、食後のコーヒーを入れるために、いつものようにお湯を沸かす。

工房の外は小雨が、シトシトと降り続いている。

こんな夜は、森の動物たちも静かで、聞こえてくるのは優しい雨音とお湯を沸かす炎の微かな音だけだ。

ーバタンー

「なんだ!?」

激しい音。うめき声。

玄関を覗くと、若い女が倒れていた。

小雨の中、この森を走ってきたのだろう。

全身ずぶ濡れで、体には泥や枝葉がまとわりついている。

肩口には血が滲んでいた。

「たす…けて…」

どうやら意識はあるようだ。

慌てて玄関を締めて、半ば抱えるようにして部屋の奥まで連れて行った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

とりあえず、着替えと止血用のタオル渡して風呂場で着替えてもらう。

その間に、入れかけていたコーヒーをやめて、リラックス効果のあるハーブティを入れる。

最初こそ取り乱していたものの、着替えを済ませて戻ってきた頃にはだいぶ落ち着いていた。

「とりあえず、着られる服があってよかった。お風呂も沸かしておくから、後でゆっくり浸かるといい」

「ありがとう…何から何まで…急に飛び込んできたのに…」

「いいさ、ちょうど退屈してたところだし。オレはぴょこ丸。この工房で武器職人をやってる。アンタは?どうしてここに?」

ハーブティを注ぎながら、とりあえず事情を聞く。

名は『ハルナ』というらしい。

街はずれを歩いていたところ、突然暴漢に襲われて、ここまで逃げ込んできたらしい。

追われていた理由が曖昧だったが、まあ、事情もあるのだろうと思い深追いはしなかった。

彼女の警戒心が解けた頃を見計らって

「さて…もう夜も遅い。どうせ行くあてもないだろうし、今日は泊まっていきなよ」

「いいの!?」

「このまま外に放り出すわけにもいかないしね。ただ、ひとつだけ『お願い』があるんだ…」

「なに?私にできることなら…」

「よかった!その『短剣』をじっくり観察させてくれないか!」

やや食い気味に返答する。

腰に携えられた『それ』は、武器職人としては見逃せないほど美しい装飾が施されていた。

彼女も始めは驚いていたものの「それでよければ」と、短剣を貸してくれた。

「さ、オレは『コイツ』をゆっくり見させてもらうから、今のうちに風呂に入っちゃうといい」

血も止まったみたいだし、お風呂に入ればこれまでの緊張も少しはほぐれるだろう。

「それじゃあ、お言葉に甘えて…」

風呂場に入っていくハルナを見送るまでもなく、今あずかった短剣を持って作業用のテーブル前に腰掛ける。

改めて見ると、とても丁寧に手入れがされている。

さぞ大切なものなのだろう…

(これは…いいものだ…)

ひさしぶりにニヤけているのが自分でもわかった。

〜つづく〜

自律〜惰性をやめること〜

いやー11月になりましたねぇ〜

今年も残すところあと2ヶ月!

やり残したことはありませんか??

ぼくは…いっぱいあります笑

さて、11月から雇用形態が変わり、正社員から一歩フリーランスに近づきました。

正社員時代より自由な時間は増えストレスは激減したのですが、一方で『怠惰な時間』がどうしても増えてしまっている…

これは、まありよろしくないぞ…

ということで、今月から、テーマを持って活動しようと思います。

で、11月のテーマは『自律』です。

『自分で立つ』ではなく『自分を律する』方の『じりつ』。

ただ、そのままでは漠然としているので、副題をつけました。

『〜惰性をやめる〜』

怠惰な時間が増えると、ついつい目の前の欲望に食いついてしまう。

具体的に言うと…

・惰眠をむさぼる

・間食が増える

・無制限にゲームしてしまう

・ついついSNSを覗いてしまう

などなど…

おお!なんと情けないていたらく!!

これではせっかくの『自由』が無駄になってしまう!

というわけで、上記の件について、全くのゼロにするわけではなく『ついつい、無意識で、惰性で』行なっていた部分を『自覚』し『律する』ことを第一とします。

そうして生まれた『本当に自由な時間』を活かして、次のステージに進む準備をしていきます。

・情報収集

・思考の整理

・読書

・勉強会動画見る

などなど…

そして、息抜きとして (ほどほどに)ゲームやったり間食したりする。

うむ。これが『自律』した大人の姿だ。

惰性で食べてた『アイス』も一旦封印。

ちゃんと『自律』できたその時までのお楽しみに…

◯本日の格言

『惰性はダセェ!!』#着想の暴発