ひよっこぴょこ丸の『脱線ライフ』

人生、脱線してからが本番!人生1回目のひよっこが世の中のなんやかんやについて書くブログ

LEFスピンオフ『人魚の歌』パート3

【前回までのあらすじ】

保護した女は、ハンターに追われる人魚だった。

短剣を見せてもらうことを条件に寝床を貸し、徹夜で作業するぴょこ丸。

疲労と安心感から熟睡していたハルナが目を覚ますと…

〜〜〜〜〜〜〜〜

ートントントントン…ー

…朝食を作る音だろうか?

リズミカルに刻まれる音と、窓から差し込む柔らかな日差しに誘われて、緩やかに目が覚めた。

どうやら雨は上がったらしい。

疲れから、他人の家の慣れないベッドで熟睡してしまっていたが、お陰で前日の疲労感はほぼない。

薬草風呂とハーブティも効いているのかもしれない。

ードンドンドンドン…ー

やや激しさを増した音に、違和感を感じつつ、階下へと降りると、そこには、予想外の光景が広がっていた…

〜〜〜〜〜〜〜〜

「ぴょこ丸!?なにやってるんだ??」

作業に没頭しすぎて、声をかけられるまでハルナが降りてきていたことにさえ気づかなかった。

「ああ、うるさかったね。これは…ちょっとひと仕事…ってもう朝か!」

気がつくと窓から日差しが差し込んでいた。

それは、ハルナも起きてくるわけだ…

ぐちゃぐちゃになった作業台を、呆れたように見ているハルナに

「…ひと段落ついたら朝食にしよう。好き嫌いとかは…ある?」

〜〜〜〜〜〜〜〜

ハルナが身だしなみを整えている間に、作業を終え、朝食の準備をする。

魚が主食らしいが、あいにく魚の在庫がなかったので、トーストとベーコンと目玉焼きで勘弁してもらった。

デザートに『ミントキューブアイス』を勧めたが、やんわりと断られたので、一粒口に放り込んで食後のコーヒーを淹れる。

「で、これからどうする?もし行くアテがないなら…」

ーバンッバンッバンッー

話を遮るように玄関の扉が激しく叩かれる。

今日も来客の予定はなかった…『招かれざる客』というわけか…

「おいッ!だれかいるんだろう?いるなら開けろッ!!」

明らかに敵意を含んだ、野太いガラガラ声。

嫌な予感がする。

「…どうしよう。きっとハンターだ…」

ハルナの顔が恐怖で引きつっている。

「大丈夫。オレが対応するから、とりあえず風呂場に隠れてて」

ハルナが風呂場に入ったのを確認して、玄関に向かう。

「はいはい。今開けるから静かにしてくれ」

扉を叩く音が収まったタイミングでゆっくりとドアを開ける。

「おいッ!オマエ、女を匿っているナ?」

扉の前には、クマと見紛うほどの巨漢が二頭の猟犬を従えて立っていた。

やはり、ハルナを追っていたハンターのようだ。

「バケモノが3匹…おかしいなぁ…『獣避けの香』を焚いてたハズなんだけど?」

「なにィ?!」

相手のペースに飲まれないよう、挑発してはぐらかす。

『獣避けの香』の匂いを嗅ぎ分けらない猟犬と見るからに体の重たそうな巨漢。

この巨体では、木の生い茂る森の中をまっすぐ進むだけでも一苦労だろう。

ハルナが森に逃げた判断は、咄嗟のこととはいえ正しかったようだ。

とはいえ、この状況でまともにやりあったら確実に負ける…考えろ…

「マナーの悪いお客さんだ…で、要件はなんだって?」

「女だよ!オンナッ!!昨日ココに逃げてきたハズだ!さっさとソイツを引き渡せッ!!」

「わかった。わかったからツバを飛ばすのやめてくれ!…で、女を引き渡したらいくらもらえるんだ?」

「おいッ!テメェ、コイツが見えないのカ?」

背負っていた大振りの剣を構える。

なるほど…たしかにこの体格なら、その大剣も難なく振り回すことが出来るだろう…

無駄に凶暴なデザインだが、おそらく威嚇の意味もあるのだろう。

チラつかせるだけで、相手を従わせることができるならその方が労力も少なくて済む。

まあ、オレならこの男にももっとぴったりの武器を作れると思うが…

っと、つい意識が逸れてしまった。

武器のことになるとつい…

武器…そうか…

「わかった。わかった。女を引き渡す…ちょっと待ってろ…」

「フンッ…最初ッから大人しく言うこと聞いてればイイんダッ!!」

鼻息を荒げるハンターを背に一度扉を閉める…

相応のリスクはあるが、今はその方法しか思いつかない。

やるしかない…

(つづく…)