ひよっこぴょこ丸の『脱線ライフ』

人生、脱線してからが本番!人生1回目のひよっこが世の中のなんやかんやについて書くブログ

LEFスピンオフ『人魚の歌』パート4

【前回までのあらすじ】

陸に上がった人魚であるハルナを追ってきたハンターの来訪。

まともにやりあったのでは勝ち目がないと判断したぴょこ丸の秘策とは…

〜〜〜〜〜〜〜〜

「おいッ!いい加減出てこいッ!!」

遅いッ!流石にもう待てないッ!!

「出てこないと、この扉ぶち破るゾッ!!」

「わかってるって、今開けるから少し下がってろ」

男の声が扉越しに聞こえる。

「3つ数えるウチに出てこいッ!!」

いきなりぶち破ってもいいが、勝手に出てきてくれるならその方が手間がない。

「サンッ…ニィ…イチッ!!ドぅわッッッ!!」

なんだ!?何が起こった!?

…水??

カウントダウンが終わる瞬間、大量の流水が扉をぶち抜いて吹き出してきたようだ。

「これは…思った以上の威力だな…」

「なんなんだいったいッ!?」

猟犬たちも駆け寄ってきた。

よろめきながら立ち上がる。

扉の吹き飛んだ入り口から『銃のようなもの』を持った女たちが出てくる…

「これなら…いける!」

男が勝ち誇ったように呟いたのが聞こえた…

〜〜〜〜数分前〜〜〜〜

ーバタンー

ノックもなく風呂場の扉が開かれ、一瞬身をすくめたが、入ってきたのはぴょこ丸だった。

「やっぱりハンターだった。時間がない。手短に説明するから聞いて」

早口でまくしたてるぴょこ丸は、昨日預けた短剣と『銃のようなもの』を手に持っていた。

「『コイツ』でハンターどもを倒す。それしかない」

「『これ』で!?私が!?」

状況がうまく飲み込めない。

「『コイツ』は、あんた専用に作った一種の『魔動銃』だ。短剣の魔力を充填して高圧で水を発射する。まあ『ハデな水鉄砲』ってところだな」

専用に作った?徹夜で??その『水鉄砲』で?ハンターを倒す??

「言いたいことはわかる。試し打ちもせずいきなり実践だからな…だが、今は信用してもらうしかない。」

「でも…」

「大丈夫。間違っても相手を殺すほどの威力は出ない。とりあえず制圧できればオレたちの勝ちだ」

聞こうと思ったことを先回りされた。

人魚だとバレた件もそうだ。この男のカン…いや、観察眼か…は妙に鋭い。

「わかった」

その『ハデな水鉄砲』を受け取り、グリップを握る。

初めて握る武器なのに、不思議と違和感がない。これもこの男の才能なのか?

「おいッ!いい加減出てこいッ!!」

しびれを切らしたハンターが叫んでいる。

「出てこないと、この扉ぶち破るゾッ!!」

「わかってるって、今開けるから少し下がってろ」

ぴょこ丸が扉越しに答える。

「3つ数えるウチに出てこいッ!!」

「ちょうどいい…カウントダウンが終わる瞬間に玄関の扉ごとぶち抜け!」

「え!?」

「いいから!構えて!」

慣れない手つきで扉に照準を合わせる。

「サンッ…ニィ…イチッ!!」

「今だ!!」

カウントダウンが終わった瞬間、ぴょこ丸の合図に合わせて引き金を引く。

「うわッ!!」

「ドぅわッッッ!!」

予想外の衝撃に吹き飛ばされそうになったが、なんとか持ちこたえる。

「これは…思った以上の威力だな…」

ぴょこ丸がつぶやく。

だけど、ちょっとだけ気分がスッキリした…いや…むしろ…

(カ・イ・カ・ン…♡)

「なんなんだいったいッ!?」

〜〜〜〜〜〜〜〜

「これなら…いける!」

勝ちを確信したが、まだ油断はできない。

ハルナが突進してきた1匹目の猟犬に銃口を向ける。

ハルナの目つきが別人のように鋭くなっている…口元はわずかに微笑んでいるように見えるが…

「キャン!」

水弾は猟犬の体の周りを水泡で包み、動きを封じる。

「なんだ?どうなってる??」

ハンターはもちろん、ハルナも動揺している。

そういえば説明してなかったな…

『短剣に込められた水の魔力を使って、放った水弾を自在にコントロールできる』

それがこの『水鉄砲』の強みであった。

もっとも、それを扱うハルナとの相性あってこそだが…

遅れて突っ込んできた2匹目に向かって放たれた水弾は、猟犬の眼前で弾けて、1匹目と同様水泡で拘束された。

「ヒィッ!!」

ハルナに睨まれて、ハンターが怯えきっている。

やはりあの武器は見かけ倒しだったか…

「イ、いのちだけはァ…」

「…許さん」

命乞いするハンターに、冷水よりも冷たい言葉が浴びせられる。

「うらぁああああ!!」

最初に扉をやっぶった時よりもさらに大量の水流が水泡となってハンターを包んだかと思うと、ハルナの声に共鳴するように震えて、猟犬の分も合わせて激しく爆ぜた。

「なんだ…今のは…」

水泡の弾けた後には、3匹…もとい、2匹と1人がずぶ濡れで気絶していた。

「これ…どうしようか?」

以前の表情に戻ったハルナに問われ

「あー、知り合いに引き取ってくれそうなアテがあるから、ちょっと連絡してみるよ。とりあえず縛っておこう」

(…つづく)